私、利根 樹子。
大きくなったら素敵な王子様と結婚するんだ~。
~この物語は、男(MMO)に翻弄される利根 樹子(とね いつこ)の一生を描いた物語である~
【2004年6月】
~樹子20才~
樹子は短大を卒業後、前より興味のあったゲーム会社「ネットマープル」に就職する。
ブラック企業という噂もあったが、上司の山下さん(通称山P)は優しく、和気あいあいとした職場。
樹子は主にお客様から大量に届くクレームに定型文の謝罪を返信する仕事を任された。
そして就職してすぐに出会ったパソコンに詳しい彼「リネ2君」と付き合い始めることに。
樹子にとって初めての彼氏、最初は何もかも新鮮だったがそのうちマンネリ気味に。
それでもリネ2君との交際は13年も続くことになる。
【2017年8月】
~樹子33才~
リネ2君と惰性で付き合っていた樹子に転機が訪れる。
8月に入社してきた「リネレボ君」との出会いである。
リネレボ君は周りからの評判もよく人気もあった。
樹子も惹かれ、13年間付き合って来たが将来の話も一切してくれないリネ2君との別れを決意、リネレボ君と付き合い始める。
【2018年】
~樹子34才~
リネレボ君は最初は理想の彼氏に思えたが、いざ付き合ってみると約束は守らない、お金を貢がされる、嘘もつくとなかなかのダメ男だった。
付き合い始めて1年も経つと、週末に決まって連絡が取れなくなり、樹子は浮気を疑って悩んだこともあった。
この年の10月に「お待たせしました、俺が男の中の男です!」が口癖のヴェンデッタ君、
11月には「男と女が対峙する!」が口癖のフェイス君と出会う。
彼氏のリネレボ君の将来に不安を感じていた樹子は2人と食事や映画に出かけてみるが、何となくフィーリングが合わず恋愛対象にはならなかった。
【2019年2月】
~樹子35才~
リネレボ君とうまくいってないのを見かねた友達の紹介で、黒髪の美男子「黒井砂漠君」と出会う。
砂漠君はとてもしっかりしていて、樹子はこの人と付き合ったほうが幸せになれるかも・・と思い始めていた。
しかし3回目のデートで砂漠君の家を訪れた樹子は驚いた。
部屋には「シャカトゥ教」と書かれた絵が飾ってあり、砂漠君は「シンワ、シンワ、シンワ・・」とその絵に向かい一心不乱に拝み始めた。
樹子は徐々に砂漠君と距離を置き、リネレボ君との付き合いを続けた。
【2019年5月】
~樹子35才~
運命の出会い。
15年前に初めて付き合った彼「リネ2君」とツタヤで偶然出会う。
リネ2君は占い師の細木〇子に「このままじゃあんた死ぬわよっ!」と言われ「リネM」と改名していた。
樹子は懐かしい思いでリネM君と数回遊びに行ったが、やはり10年以上も結婚の話が出なかった彼に戻ることはできず、二人の仲は進展することは無かった。
【2019年10月】
~樹子35才~
ちょっとした出会いが。
よく昼食を買いに行くお弁当屋さんで働いていたテラオジリン君だ。
テラオジリン君はいつもご飯を多めにしてくれて、樹子は「私に気があるのかな」と思っていたが、樹子の勘違いで恋愛するまでには至らなかった。
【2020年】
~樹子36才~
立派なアラフォーと呼ばれる年齢だ。
すでに結婚に対する執着心も失せていた。
1人で吉野家に入るのも気にしなくなっていた。
そして相変わらず何事においてもだらしないリネレボ君との付き合いは続いていた。
樹子はいつものように仕事終わりに一人で映画を観に行った。
この日の映画のタイトルは「君の縄。」新海ゴメス監督の変態ラブストーリーだ。
そこで偶然隣に座った男、彼もまた一人で映画を観に来ていた。
映画が終わって劇場が明るくなると隣の男に声をかけられた。
「目の下にクマができてますよ、寝不足ですか?」
初対面なのにデリカシーの無い言葉だとは思ったが、リネレボ君のせいで常に疲れていた樹子はその男の言葉に涙ぐんだ。
男は少し困った様子で言った。
「あれ、冗談だったんだけど悪い事言っちゃったかな?僕、リネ2Mと言います。もしよかったら食事でも行きませんか?お詫びにおごりますよ」
樹子はこの時に思った。
「リネ2M君、もしかすると運命の人かもしれない・・!」
リネ2M君は積極的で、樹子はついにリネレボ君に別れを切り出すことにした。
「もうあなたのいい加減さには付き合いきれません、別れましょう」
樹子が送信する。
しばらくしてリネレボ君から返事が返ってきた。
「この度は私について貴重なお声をお寄せくださいまして誠にありがとうございます。お寄せいただきましたご意見・ご指摘は受け止めさせていただきます。
しかしながら、必ずしもすべて反映されるとはかぎりませんので、その点につきましては何卒、ご理解ご了承をお願いいたします。」
樹子はブチ切れた。
リネレボ君との記憶を頭の中からアンインストールした。
そしてリネ2M君との新しい恋が始まった・・・
その後、最初は完璧に見えたリネ2M君だったが、付き合って間もなくお金を貢がされ、約束にもだらしない男だということがわかった。
樹子は「もう男(MMO)はうんざり!」とリネ2M君に別れを告げ、その後は生涯独身を貫いた。